Power Automate活用で発生してしまう野良フロー問題とその対策

こんにちは、SxSの技術サポートチームです。
皆さんは「野良フロー」という言葉を聞いたことがありますか?
「野良フロー」とは、IT部門や管理者の管理下にない状態で、個人が独自に作成・運用しているPower Automateのフローや作成者の移動、退職で管理が宙に浮いてしまっているPower Automateのフローのことを指します。

最近、多くの企業でMicrosoft 365の活用が進み、Power Automateを使って業務効率化を図る動きが活発になっています。
Power Automateは直感的な操作で業務自動化ができる素晴らしいツールですが、手軽に使えてしまうがゆえに「知らないうちに野良フローが増えている」という状況が発生しているのです。

目次

このブログは SxS を提供しているソノリテが作成しています。

なぜ野良フローが生まれるの?

野良フローが生まれる背景には、いくつかの理由が考えられます。

  1. Power Automateの使いやすさ:技術的な知識がなくても、直感的な操作で自動化フローを作成できるため、業務効率化のために個人が独自に作成することが容易です。
  2. 迅速な問題解決への欲求:「この作業、自動化できたらいいのに」と思ったとき、IT部門に依頼するより自分で作った方が早いと考える方も多いでしょう。
  3. ガバナンス体制の未整備:Power Automateの利用ポリシーやガバナンス体制が整っていないため、運用フェーズのにおける人の入れ替わりなどで発生しがちな、野良フローを防ぐ仕組みがありません。

野良フローがもたらす問題点

業務効率が上がっているならOK! と一見問題なく思えてしまうところですが、野良フローは組織にとっては以下のようなリスクをもたらします。

セキュリティリスク:管理されていないフローは、意図せずに機密情報を外部に流出させる可能性があります。
例えば、社内の顧客データを個人のメールアドレスに自動転送するフローが作られていたら、情報漏洩のリスクとなりますね。

運用の不安定性:作成者だけが内容を把握している野良フローは、その人が休暇や部署異動、退職した場合に対応できなくなります。
「山田さんが作ったフローが動かなくなったけど、山田さんは今週休みで誰も修正できない!」という事態が発生していませんか?

重複開発によるリソース浪費:組織内で情報共有がされないと、同じような機能のフローが複数作られ、無駄なリソースが使われることになります。

コンプライアンス違反のリスク:データ保護やプライバシーに関する法令・規制に違反するフローが知らないうちに運用されるリスクがあります。

野良フローとどう向き合えばいいか?

野良フローが生まれてしまうこと自体を「問題」と捉えて、過剰に制限をかけるのは建設的な対応でありません。
むしろ、現場で自発的に業務を改善しているサインとして捉えることができます。
IT部門としては、現場の活用したいという気持ちに横槍をいれすぎず、「どこで・何が・どう動いているか」を把握できる状態を作ることが重要です。
そのうえで、リスクの高い部分には制限をかけつつ、安心して活用できる仕組みやルールを整備していきましょう。

組織的なアプローチ

管理体制の整備

野良フロー対策の第一歩は、組織内での管理体制を整備することです。
Microsoft公式も推奨しているように、Power Platformの活用を促進しながらも適切に管理する体制が必要です。

Microsoft公式のガイダンスでは、次のように説明されています。
「ガバナンスと制御を維持しながら有機的成長に投資と育成を行うことが重要です。イノベーションと改善を推進しながらも、組織的なサイロを解消できる体制が望ましいでしょう。」

環境の適切な設計

Power Platformの環境(Environment)を適切に設計することも重要です。

例えば、開発環境・テスト環境・本番環境を分けたり、部門ごとに環境を分けたりすることで、フローの管理がしやすくなります。

運用面での対策

フロー作成ガイドラインの策定

組織内でのフロー作成に関するフロー作成ガイドラインを策定し、共有することが大切です。フロー作成ガイドラインには以下のような内容を含めると良いでしょう

  • フロー作成の申請・承認プロセス
  • 命名規則(例:「部署名_目的_作成者」など)
  • 必須のドキュメント(フローの目的、処理内容、影響範囲など)
  • テスト方法と承認基準

定期的な棚卸しと監査

定期的にフローの棚卸しを行い、不要なフローや問題のあるフローを特定・対処することも重要です。棚卸しの方法としてはじめやすいものとしては以下のものが挙げられます。

  • Power Platform管理センター上で一覧を確認
  • Power Shellスクリプトでフローの一覧を取得する

棚卸しを行う際は、フローの作成者・所有者といった利用者の情報や最終更新日、最終実行日 といった実行情報を確認することが推奨されます

教育とコミュニケーション

最も重要なのは、ユーザーへの教育とコミュニケーションです。
なぜガバナンスが必要なのか、どのようにフローを作成・管理すべきかを理解してもらうことで、野良フロー問題の根本的な解決につながります。

野良フロー対策を始めよう! ~オススメはコレだ!~

野良フロー対策は一朝一夕にはいきません。

まずは以下のステップから始めてみましょう。

ステップ1:現状把握と棚卸し

まずは組織内にどのようなフローが存在しているのかを把握することから始めましょう。Power Platform管理センターを使用すると、テナント内のすべてのフローを確認できます。
現状把握のポイントは以下の通りです:

  • 誰がどのようなフローを作成しているか
  • どのようなコネクタが使用されているか
  • 機密データを扱うフローはあるか
  • 業務クリティカルなフローはあるか

ステップ2:簡易的な運用ガイドラインの策定

次に、簡易的なものでいいので運用ガイドラインを策定しましょう。いきなり厳格なルールを設けるのではなく、最低限守るべきことが明確になっていることが大切です。

運用ガイドラインに載せる項目として以下のような内容が挙げられます。
ご自身の環境に合わせて適宜カスタマイズをしましょう:

  • 業務にクリティカルなフローは必ずドキュメントを作成する
  • 個人アカウントではなく、共有アカウントでフローを作成する
  • 機密データを扱うフローは事前に上長の承認を得る

ステップ3:運用ガイドラインを用いた定期的なレビューと改善

運用ガイドラインを作成したら、定期的にレビューとフローの改善を行いましょう。
定期的にユーザーの利用状況や運用ガイドラインが実運用の状況と乖離してないかチェックしましょう:

  • 新しく作成されたフローは運用ガイドラインに沿っているか
  • 運用ガイドラインから外れたフローはないか
  • ガイドラインの改善点はないか

レビュー結果を元に、必要に応じてガイドラインを更新したり、教育内容を見直したりすることが肝心です!

ステップ4:より高度な管理へのステップアップ

基本的な対策が軌道に乗ったら、より高度な管理方法を検討しましょう。
例えば、Microsoft提供のCoEスターターキットを活用することで、より体系的な管理が可能になります。
CoEスターターキットは、Power Platformの管理・監視に役立つツールやテンプレートが含まれており、野良フロー対策にも効果的です。

ただし、導入には一定の準備と知識が必要なので、まずは基本的な対策から始めることをお勧めします。
参考:センター オブ エクセレンス (CoE) の概要 – Power Platform

野良フロー以外のリスクにも注意

野良フロー問題以外にも、Power Automateの運用には注意すべきポイントがあります。

ライセンス管理のリスク

Power Automateのライセンスは複雑で、使用するコネクタや実行頻度によって必要なライセンスが異なります。
適切なライセンス管理を怠ると、予期せぬコスト増加や、ライセンス違反による機能制限が発生する可能性があります。

特に 従量課金制を利用している場合、大量の実行や高頻度トリガーを含むフローが放置されていると、月のクレジットが一気に消費されてしまうこともあります。
使用状況のモニタリングとアラート設定を行い、無駄な実行を抑制する運用が重要です。

また、ユーザー自身で有償ライセンスを購入することができるセルフサービス購入という仕組みが導入されています。
管理者が知らないうちにライセンス購入されるといった、ライセンス管理の破綻につながる可能性もあるため、テナントに対して適切な制御を行うなどの対応策も考えられます。

Power Automate価格とライセンス体系についてはこちらの記事ご紹介しています。

パフォーマンスとスケーラビリティの問題

テナント内で多数のフローが同時に実行されたり、大量のデータを処理するフローがあると、パフォーマンスの問題が発生する可能性があります。
特に、組織全体でのフロー数が増えると、全体的な処理速度が低下することもあります。
パフォーマンス低下」と呼ばれる現象で、同時にたくさんのフローが実行されると渋滞が発生するようなものとイメージしてください。
実行タイミングをずらずなど、交通量を適切に調整したり、必要に応じて道路を拡張することが重要になります。

また、Power Automateではトリガーの実行間隔やフローの処理タイミングに一定の制限があります。
たとえば「○○が更新されたとき」といったトリガーは、無償ライセンスと有償ライセンスでは更新の確認間隔が異なっています。(もちろん有償ライセンスのほうが短くなっています。)
こうした制限はライセンスの種類によって異なるため、詰まりや遅延が課題になる場合は、有償ライセンスの導入で実行タイミングの制限を緩和することが可能です。

課題に合わせて適切な対応策を検討しましょう。

バージョン管理と変更管理

フローの更新や変更を適切に管理しないと、予期せぬ動作変更や障害が発生するリスクがあります。特に複数人で一つのフローを管理する場合は、変更履歴の管理が重要です。
作成ガイドラインやユーザー教育の中で、バックアップの保管や、開発環境と本番環境を分離するといった対応策を説明することが重要です。

まとめ

Power Automateは業務効率化の強力なツールですが、適切な管理がなければ「野良フロー問題」をはじめとする様々なトラブルが発生するリスクが存在しています。
野良フロー対策の要点をまとめると:

  1. 現状把握と棚卸し:まずは組織内のフローの状況を把握する
  2. 簡易ガイドラインの策定:最低限のルールを明確にし、共有する
  3. 定期的なレビューと改善:断続的に状況をチェックし、対策を行う
  4. 段階的なアプローチ:一度にすべてを変えるのではなく、段階的に改善を進める

野良フロー対策は、単なる「制限」ではなく、「より良い活用のための基盤づくり」と考えることが大切です。
適切なガバナンスがあってこそ、Power Automateの真の力を組織全体で発揮できるのです。

私たちSonoriteでは、Microsoft 365やPower Platformの導入・運用に関するサポートを提供しています。
野良フロー対策やPower Automateの効果的な活用方法についてもご支援が可能です。
ぜひ、お気軽にご相談ください。

ソノリテ の Power Platform の活用支援サービスの内容はこちらのページからご確認いただけます。

また、Power Automate の活用でお困りのことがありましたら、お問い合わせフォームよりお問い合わせください。

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